中小企業IT利活用 困りごと辞典OSAKA AI-Center(OAIC)が運営する民間の取り組み

業者さんの説明が、結局よく分からないまま進みそう

業者の説明が分からないのは、こちらの知識が足りないからではない。説明が「相手の売れる範囲の言葉」で組まれていて、自社の業務の言葉に翻訳されていないからだ。理解しようと頑張る側から、翻訳させる側に立ち位置を変える。

打ち合わせの席で、業者の担当者がひととおり説明を終える。図もある、資料もある、相手は淀みなく話す。それでも席を立ったあと、手元に残るのは「で、結局うちは何を買うんだっけ」という、ぼんやりした感触だ。分からない、とはっきり言えるほど分からないわけでもない。なんとなく良さそうな気はする。だが、このまま「じゃあ、それでお願いします」と言ってしまってよいのか、確信が持てない——この辞典が扱うのは、その場面である。

こんな場面に、心当たりはないか

  • 説明を聞いている最中は分かった気になるのに、あとで人に「どういう話だった?」と聞かれると、うまく説明できない。
  • 資料に出てくる言葉(「連携」「基盤」「最適化」など)が、自社の実際の仕事のどの部分の話なのか、結びつかない。
  • 質問したいが、何を質問すればいいのかが分からない。的外れなことを聞いて、無知だと思われるのも気まずい。
  • 「他社さんもみんな入れてますよ」「今がお得です」と言われると、それ以上突っ込めなくなる。
  • 一度説明を受けて話が進み始めると、いまさら「よく分かっていない」とは言い出しにくくなる。
  • 見積もりの金額は具体的なのに、それで自社の何がどう変わるのかは、最後まで具体的にならない。

分からないまま、話だけが前に進んでいく。この落ち着かなさの原因は、多くの場合、実際とは逆のところに置かれている。

会議机の上に置かれた業者の提案書。専門用語の並んだページの上で、聞き手の手がペンを持ったまま止まっている様子

たいてい、こう考える

説明が分からないとき、多くの経営者はその原因を自分の側に置く。

「自分がITに詳しくないから、話についていけないのだ」。だから、こう動く。次の打ち合わせまでに少し勉強しておこう。分かる用語を増やそう。あるいは、社内でいちばんパソコンに強い社員に同席してもらおう。知り合いのITに明るい人に、あとで資料を見てもらおう。どれも自然な反応だ。分からないなら、分かるように自分が努力する——真面目な経営者ほど、そう考える。

だが、少し勉強したくらいで用語が埋まることはないし、次の打ち合わせでは、また新しい分からない言葉が出てくる。追いかけても追いかけても、相手の土俵の言葉は尽きない。同席してもらった社員も、結局は同じ顔で首をかしげている。努力の方向は正しそうに見えて、いつまでも埋まらない。

だが、本当の問題は「専門用語が分からないこと」ではない

説明が分からない本当の原因は、聞く側の知識不足ではない。説明が、相手の「売れる範囲の言葉」で組まれていて、こちらの業務の言葉に翻訳されていない——ここにある。

業者の説明は、悪意でつくられているわけではない。ただ、業者は自社が扱えるもの・売れるものを軸に説明を組み立てる。これはごく自然なことだ。製品を売る会社は自社製品の言葉で語り、システムを作る会社は開発できる範囲の言葉で語り、通信を売る会社は回線の言葉で語る。誰も嘘はついていない。それぞれが、自分の商品を説明しているだけだ。

問題は、その言葉の並びが、聞く側の会社の「実際の仕事」を出発点にしていないことにある。相手が話しているのは「この製品でできること」であって、「あなたの会社の、あの手間のかかっている作業が、どう変わるか」ではない。この二つは、地続きに見えて別のものだ。だから、どれだけ丁寧に説明されても、自社の仕事と結びつかない。結びつかないものは、いくら聞いても「分かった」にならない。

ここに、大事な事実がある。説明が自社の言葉に翻訳されていないのは、聞く側の頭が悪いからではなく、翻訳するのが本来は相手の仕事だからだ。自社の業務を出発点にして、その言葉で説明を組み直す——そこまで組み直された説明が出てくるとは限らない。自社の商品の説明が、そのまま並べられているだけ、ということもある。

つまり、分からないまま進みそうな不安は、知識の量の問題ではなく、立ち位置の問題である。理解しようと頑張る側に回っているかぎり、この不安は消えない。

では、どう考えるか

考え方を変える。理解する側に立つのをやめて、翻訳させる側に立つ

こちらが相手の言葉を必死に理解しにいくのではなく、相手に、こちらの言葉で説明し直させる。軸になる問いは一つだ。「その話は、うちの◯◯の作業でいうと、何がどう変わるということですか」。◯◯には、自社の具体的な作業名が入る。伝票の入力でも、在庫の確認でも、月末の請求書づくりでもいい。相手の説明を、自社の日々の作業に着地させる。着地したときだけ、それは「分かった」になる。着地しないなら、それは自社にとってまだ意味を持っていない、というだけのことだ。

もう一つ、立ち位置を変えると見えてくることがある。相手が信用できるかどうかの見抜き方だ。良いことばかり並べる説明は、翻訳ではなく売り込みである。だから、逆を尋ねる。「これが向かないのは、どういう会社ですか」「うちのような規模だと、どこが物足りなくなりますか」「導入したあと、追加でお金がかかるとしたら、どういう場面ですか」。

向かない場面やデメリットを、具体的に・自社の状況に即して語れる相手は、こちらの業務を分かろうとしている。逆に、「特にありません」「御社なら大丈夫です」としか返ってこないなら、こちらの状況に即した答えは、その場では出てきていない。デメリットを語れるかどうかは、その相手が「翻訳できる相手」かどうかを映す鏡になる。良い面を上手に話せることは、実はあてにならない。誰でもできるからだ。

理解できないのは、まだ翻訳されていないからである。翻訳を求める立場は、もともと買う側にある。

選び方:道はいくつかある

業者の説明を「自社の言葉」に翻訳するやり方には、いくつかの道がある。同じ困りごとでも、人数と時間の余裕で、取れる道は変わる。

A案:AIに、説明を翻訳させる

業者から受け取った提案書や説明のメールを、そのままAIに読ませて、翻訳させる、という道がある。渡すのは、こちらの質問ではなく、相手が書いた文書のほうだ。それを自社の言葉に組み直させる、という使い方になる。

やることは、こうだ。提案書のファイルや、説明メールの文面をAIに渡し、次のように頼む。

  • 「この中の専門用語を、ITに詳しくない人にも分かる言葉に置き換えて」
  • 「この提案で、うちが実際にやる作業がどう変わるのか、具体的に説明して」
  • 「この説明で"触れられていないこと"を挙げて。前提になっている条件、あとで追加でかかりそうな費用、この提案が向かない会社の特徴」
  • 「この業者に、次の打ち合わせで聞き返すべき質問を、リストにして」

つまり、相手の土俵の言葉を、自分の土俵の言葉に通訳させる。しかも、説明の中で「言われていないこと」——前提や、隠れた追加費用や、向かない場面——を先に洗い出しておける。ここが人間だけでやるより効くところだ。売り込みの文章は、都合の悪いことをさらりと省いて書かれていることがある。AIは、その「省かれた部分」を、こちらの代わりに指摘してくれる。業者の説明を鵜呑みにするか、自力で必死に読み解くか、の二択だったところに、「翻訳させて、聞き返す材料をそろえる」という第三の道が入る

  • 向く場面:提案書や見積書、説明メールなど、文書の形で手元に資料がある会社。専門用語が多くて、どこから手をつけていいか分からないとき。
  • 割に合わないこと:AIが出した翻訳や指摘が、その業界特有の事情まで正確とはかぎらない。あくまで「聞き返す材料」をそろえる道具であって、最終判断は人がする。渡す文書に取引先の固有名詞などが含まれる場合は、扱いに注意がいる。
  • 始める前に要ること:業者からの資料を、文字にして手元に用意すること(紙しかなければ、写真やPDFでよい)。自社の「変えたい作業」を一つ、具体的な名前で言えるようにしておくと、翻訳の精度が上がる。

※AIにはいろいろな種類・サービスがある。ここでは「特定の製品を入れる」話ではなく、「手元の説明を自社の言葉に翻訳させる」という使い方を指している。どれが合うかは、会社の状況によって変わる。

B案:その場で、相手に言い直させる

打ち合わせの席で、分からない言葉が出るたびに「それは、うちの◯◯の作業でいうと何ですか」と聞き返し、相手に翻訳させる。

  • 向く場面:担当者が誠実で、対話が成り立つ相手。じっくり付き合ってくれそうな相手のとき。
  • 割に合わないこと:相手の力量と善意に依存する。翻訳できない担当者だと、聞き返しても堂々巡りになる。その場の反応の速さも要る。
  • 始める前に要ること:自社の「変えたい作業」を、具体的な作業名で一つ言えるようにしておくこと。これがないと、聞き返しても着地する先がない。

C案:向かない場面と追加費用を、書面で出させる

口頭のうまい説明に流されないため、「この提案が向かない会社の特徴」「あとで追加でかかる費用」を、紙かメールで書き出してもらう。

  • 向く場面:複数の業者を比べたいとき。あとで「言った言わない」を避けたいとき。
  • 割に合わないこと:手間と時間がかかる。相手が書面化を渋る場合もある(渋ること自体が一つの判断材料にはなる)。
  • 始める前に要ること:出してほしい項目(向かない場面・追加費用・前提条件)を、先にこちらでリストにしておくこと。

正解を一つ決めるための並びではない。手元に資料があるならAで下ごしらえをしてからBの席に臨む、というように、組み合わせてもよい。一度に完璧を目指さず、自社の状況で回せそうなものから始める。

自分でできる、はじめの一歩

お金をかけずに、次の打ち合わせから試せることがある。

説明を聞きながら、頭の中で一つの問いだけを持っておく——「これは、うちのどの作業の話だ?」。相手の言葉が自社の具体的な作業に着地したら、それは分かったということ。着地しないまま話が進みそうになったら、そこで一度止めて、こう聞く。「すみません、それは、うちの◯◯でいうと何が変わる話ですか」。この一言だけで、説明の焦点が、相手の商品から自社の仕事へと移る。

もう一つ。良い面をひととおり聞き終えたら、必ず逆を一つ尋ねる。「これが向かないのは、どういう会社ですか」。この問いへの答え方で、相手が翻訳できる相手かどうかが分かる。手間も費用もかからない。

この一歩でできるのは「分かったつもりのまま進むのを止める」「翻訳できる相手かを見極める」までだ。そこから先、翻訳された内容を自社の事情に照らして、本当に必要かを決める判断が残る。

それでも、自社の事情が残るときは

「翻訳させても、その中身が自社にとって妥当なのか、やはり判断がつかない」「向かない場面を挙げられたが、それが自社に当てはまるのか分からない」「そもそも、この業者に話を進めてよいのか迷っている」——こうした問いは、最後まで残りやすい。受けている説明の中身も、手元にそろっている材料も、会社ごとに違う。

そういうときは、OSAKA AI-Center の窓口に相談するという選択肢がある。何かを買う必要はなく、こちらから売り込むこともない。「こういう説明を受けているのだが、これは自社の言葉でいうと何なのか」——その翻訳を一緒に確かめるところまでが、この辞典の役割である。

ITは、本来は専門家の領分でもある。弁護士や税理士のように、ITと経営の両方を知る第三者を"ブレイン"として側に置く——という考え方もある。何もかも自社だけで抱え込まなくていい。この辞典も、そうした相手と一緒に読めば、自社に合った次の一手につながりやすい。

うちの場合はどうなのか、という部分は残る。

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この辞典について

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