引き口
お金・コストの判断に迷う
全8件
AIを入れるのに、いくらかかるのか分からない調べても金額がばらばらなのは、情報が足りないからではない。金額を示しているのがいずれも売っている側であり、値段が使い道の側で決まるためである。国の調査でも、日本の企業がAIについて最も多く挙げた懸念は費用ではなく「効果的な活用方法がわからない」だった。毎月の利用料が、気づけば結構な額になっている一つひとつは安いはずの月額が、いつの間にか会社の固定費を押し上げている。原因は契約の数ではなく、その都度「今これは要る」と正しく判断してきた——その小さな最適化の積み重ねが生む、皮肉な結果のほうにある。「人を雇うより安い」で入れたのに、人件費は減っていない「人ひとり分浮く」で入れたのに、給与の合計は変わらない。だが原因は失敗ではなく、効果の物差しのほうにある。ツールが減らすのは頭数ではなく、一人あたりの負荷だ——という、期待の立て方のズレを解く。最初の費用が大きく、踏み出していいか迷っている見積もりの数字を前に手が止まるのは、金額が高いからではない。「間違えたら丸ごと無駄になり、取り返しがつかない」という一点が人を止めている。だから問うべきは「安いか高いか」ではなく、「小さく試して、引き返せる形にできるか」のほうだ。払っている費用に、見合った効果が出ているか分からない効果が「見えない」ことと、効果が「出ていない」ことは別である。導入前の状態を記録していないから比べられず、しかも中小企業のITの効果は"起きなかった損失"や"浮いた時間"という目に映らない形で現れる。だから「見えない=ムダ」と切ると、効いているものまで止めてしまう。使っていない契約があるが、解約していいか判断できない「解約していいか分からない」の正体は、勇気や決断力の問題ではない。その契約が業務のどこに繋がっているかを、社内の誰も知らない——という情報の断絶にある。要るのは思い切りではなく、止める前に依存関係を炙り出すことだ。補助金が使えるらしいが、自社が対象か分からない補助金は「安く買える機会」に見えて、実は「買う理由を外から差し込んでくる誘因」でもある。対象かどうかを調べる前に、「それ、補助金がなくても要るものか」を先に置く——手段と目的が入れ替わらないための、判断の順番の話。月額料金が少しずつ増えて、合計が把握できていない月額料金の合計が把握できないのは、管理がゆるいからではない。「少しずつ増える」という増え方そのものが、人間には気づけないように出来ているからだ。明細を毎月見ていても、そこに総額とその傾きは映らない。認知の錯覚として、この現象を解く。
