中小企業IT利活用 困りごと辞典OSAKA AI-Center(OAIC)が運営する民間の取り組み

打ち合わせの記録が残らない、議事録を作る時間がない

議事録が残らない正体は「書く時間がない」ではなく、人は聞きながら書けないという身体の限界にある。会議は録音して聞くに専念し、記録は後からAIに要約させる——時間差の分業に変える考え方。

その場では「あれもこれも決まった」はずなのに、一週間後に「あれ、どっちで話がついたんだっけ」と誰も思い出せない。言った・言わないになる。決めたはずの宿題が、誰の担当かあいまいなまま宙に浮く。議事録を作ろうにも、通常業務を終えたあとに録音もメモもないところから書き起こす時間などない——この辞典が扱うのは、その場面である。

こんな場面に、心当たりはないか

  • 打ち合わせ中は「あとで議事録にまとめよう」と思っていたのに、終わったら次の予定に押されて、そのまま流れた。
  • メモを取る係を決めたが、その人が書いている間の話を聞き逃していて、肝心なところが抜けている。
  • 決まったことは覚えているが、「誰が」「いつまでに」やるのかが、記録にも記憶にも残っていない。
  • 手書きのメモは残っているが、自分にしか読めない断片で、他の人に共有できる形になっていない。
  • 「議事録は要らない、口頭で十分」でずっと来たが、社外との打ち合わせで、あとから食い違いが出て困った。
  • 一応まとめてはいるが、清書に毎回三十分から一時間かかっていて、これが地味に負担になっている。

記録が残らないのは、真面目にやっていないからではない。むしろ会議の中身に集中していた人ほど、あとに何も残っていない、ということが起きる。

打ち合わせ中の会議机。数人が話し合っている手前で、スマートフォンが一台、録音中の画面を表示して置かれている様子

たいてい、こう考える

記録が残らないことに困ったとき、選ばれやすいのは次のやり方だ。

「次からは、ちゃんとメモを取る係を決めよう」。あるいは「フォーマットを用意して、その場で埋めていこう」「終わったらその日のうちに清書して共有するルールにしよう」。どれも、実際によく行われている対策だ。

だが、この手の対策が長く続いた会社は多くない。メモ係は数回で形骸化し、フォーマットは空欄のまま残り、「その日のうちに清書」はいちばん忙しい日にこそ守られない。人の規律に頼る対策は、専任の担当がいて定型業務にできる会社を除けば、たいてい続かない。

だが、本当の問題は「書く時間がない」ことではない

議事録が残らない本当の原因は、時間がないことでも、意志が弱いことでもない。人は、聞きながら書けない——詰まっているのは、この一点だ。

打ち合わせで交わされる言葉は、耳から入ってきて、次の瞬間には消える。それを書き取ろうとすると、書いている数秒から十数秒のあいだ、次に話されていることが聞こえなくなる。書けば聞き逃し、聞けば書けない。これは注意の向け方の問題であり、努力や慣れでどうにかなる話ではない。一人の人間が、同じ瞬間に「理解しながら聞く」と「文字に起こす」の両方を全力でやることは、そもそもできない。

だから記録係を置くと、皮肉なことが起きる。その人は書くことに気を取られて、議論そのものからは半分抜けてしまう。いちばん場の流れを分かっているべき人が、いちばん記録に追われて発言できない。会議の質そのものが、記録のために削られている。

もう一つ、見落とされがちなことがある。議事録の値打ちは、交わされた言葉を全部書き写すことにはない。本当に必要なのは「何が決まったか」「誰が、いつまでに、何をやるか」の数行だけである。ところが会議では、その数行に至るまでに、雑談も、脱線も、結局採用されなかった案も、大量に言葉が飛び交う。記録が大変なのは、この大量の言葉の山から、あとで肝心の数行を選び出す作業が重いからだ。問題は「書く時間」ではなく、「聞きながら書けない」という人の構造と、「大量の言葉から要点を削り出す」という作業の重さにある。ここを外さないと、対策はいつも「もっと頑張ってメモを取ろう」に戻ってしまう。

では、どう考えるか

考え方を変える。一人の人間に「聞く」と「書く」を同時にやらせるから無理が出る。ならば、この二つを同じ瞬間にやるのをやめて、時間をずらして分ける。

会議の最中は、記録のことを忘れて、全員が「聞いて、考えて、決める」に専念する。言葉は消えていってかまわない。なぜなら、その場のやり取りは録音という形でまるごと残しておくからだ。そして記録を起こす作業は、会議が終わったあと、別の時間にまわす。

これが、この困りごとの本丸である。議事録づくりを「聞きながら書く」から「録音して、あとから要約する」という時間差の分業に組み替える。会議中の人間は聞くことだけに集中でき、記録係が議論から抜ける必要もなくなる。大量の言葉から要点の数行を削り出す作業は、あとから落ち着いて——あるいは、次に述べるように人以外の手を借りて——片づける形になる。

ここには、一つ線が引かれる。ここでやろうとしているのは、ゼロから文章を作り出すことではない。すでに交わされて録音に残っている大量の言葉を、「決まったこと・宿題・担当と期限」の形に削り込むことだ。生み出すのではなく、削る。この違いが、次の「選び方」で効いてくる。

選び方:道はいくつかある

打ち合わせの記録をどう残すかには、いくつかの道がある。どこから入るかは、会社の事情で変わってくる。

A案:会議を録音し、AIに要約させる

記録を起こす部分そのものを、人ではなくAIに肩代わりさせる道がある。やってもらうのは、大量の言葉から要点を削り出す作業、つまり要約である。生み出すのではなく、削る側の作業だ。

現場での動きは、こういう形になる。打ち合わせを、机の上に置いたスマートフォン一台で録音する。特別な機械は要らない。会議が終わったら、その音声、あるいは音声を文字に起こしたものをAIに渡し、こう頼む——「この打ち合わせの内容を、①決まったこと ②持ち帰りになった宿題 ③誰が・いつまでに何をやるか、の三つに分けて整理して」。すると、一時間の会話が数行の議事録の形にまとまって返ってくる。

会議中は、誰も書かない。全員が聞くことと決めることに専念できる。文字起こしと要約という、人がやると重くて続かない部分だけを、まるごと機械にわたす、という考え方だ。

  • 向く場面:打ち合わせが多く、そのたびに議事録が後回しになっている会社。決定事項の言った・言わないが、たびたび問題になる会社。
  • 割に合わないこと:録音がうまく拾えていないと精度が落ちる(声が遠い、複数人が同時に話す、専門用語が多い、など)。またAIは言葉を要約するのは得意だが、意味を人間のように理解しているわけではなく、話の力点を取り違えることがある。だからでき上がった要約を、その場にいた人が最後に一度目を通して直す——この確認だけは人がやる。ここを省くと、間違った記録が一人歩きする。
  • 始める前に要ること:録音を残してよいか、参加者に一言ことわること(特に社外との打ち合わせ)。スマートフォンの録音機能が使えること。それだけで始められる。

※AIにはいろいろな種類・サービスがある。ここでは「特定の製品を入れる」話ではなく、「録音した会議の言葉を、要点の形に要約させる」という考え方を指している。どれが合うかは、会社の状況によって変わる。

B案:録音だけ残して、要約は人がやる

AIを使わず、会議は録音し、あとから人が聞き直して要点を書き起こす。

  • 向く場面:外部に音声を渡すことに慎重な内容を扱う会社。まずは「聞きながら書かない」だけを試したい会社。
  • 割に合わないこと:要点を削り出す重い作業は、結局人に残る。一時間の会議を聞き直すのにも相応の時間がかかる。
  • 始める前に要ること:録音の可否を参加者にことわること。誰が聞き直して起こすかを、あらかじめ決めておくこと。

C案:会議のやり方そのものを、記録が残る形に変える

議事録を別に作るのではなく、会議の進め方を変える。画面に「決定事項」「宿題」の枠を映しておき、その場で決まった順に一行ずつ埋めていく。会議が終わった時点で、その画面がそのまま記録になる。

  • 向く場面:参加人数が少なく、決めることが明確な定例の打ち合わせ。
  • 割に合わないこと:枠を埋める進行役が要る。議論が白熱すると、結局その場では書ききれない。込み入った打ち合わせには向かない。
  • 始める前に要ること:会議の頭に「今日決めること」を先に出しておくこと。枠を映せる画面やホワイトボードがあること。

並べた案に、優劣はない。自社の打ち合わせの数と中身に照らして、続けられそうなものから始める。一度に完璧な議事録を目指すと、そもそも書き始められないまま終わる。

自分でできる、はじめの一歩

お金をかけずに、次の打ち合わせで今日から試せることがある。

次の打ち合わせで、机の上にスマートフォンを一台置き、録音を始める(社外の相手がいるなら「記録用に録音してよいですか」と一言ことわる)。そして自分は、メモを取ろうとするのをやめて、話を聞くことだけに集中してみる。書かなくても、言葉は録音に残っている。

会議が終わったら、その録音を聞き直しながら、たった三行だけ書き出す——「決まったこと」「宿題」「誰が・いつまでに」。全部を書き起こさなくても、この三行があれば、あとで言った・言わないにはならない。

この一歩でできるのは、「録音を残す」「聞くことに集中する」「要点だけ拾う」までだ。ここまでを何度か試すと、いちばん時間のかかる「聞き直して要点を起こす」部分を軽くしたい、という次の課題が見えてくる。そこがちょうど、A案の入り口になる。

それでも、自社の事情が残るときは

「録音を残していいのか、社外との打ち合わせでどう切り出せばいいか分からない」「AIに要約させるといっても、音声をどう渡せばいいのか見当がつかない」「業界の専門用語だらけの会議で、ちゃんと要点を拾えるのか不安だ」——そういう声は、実際によく出る。打ち合わせの数も、中身も、外に出してよい範囲も、会社ごとに違う。

そういうときは、OSAKA AI-Center の窓口に相談するという選択肢がある。何かを買う必要はなく、こちらから売り込むこともない。「うちの打ち合わせはこういう感じで、記録がどうしても残らない」——その困りごとを一緒にほぐして、自社に合ったやり方を考えるところまでが、この辞典の役割である。

ITは、本来は専門家の領分でもある。弁護士や税理士のように、ITと経営の両方を知る第三者を"ブレイン"として側に置く——という考え方もある。何もかも自社だけで抱え込まなくていい。この辞典も、そうした相手と一緒に読めば、自社に合った次の一手につながりやすい。

うちの場合はどうなのか、という部分は残る。

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この辞典について

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