引き口
セキュリティが不安
全8件
ランサムウェアに感染したかもしれないが、まず何をすればいいか分からない身代金を要求する画面が出たとき、多くの会社はまず電源を落とし、次に早く元に戻そうとする。だがその二つは、どちらも「どこから入られたか」を確かめる材料を消す方向に働く。国が中小企業向けに示している手順は、止め方と戻し方の順序を、はっきり分けている。退職した人が、まだ会社のデータに入れるかもしれない辞めた人のアカウントが、消えないまま残っている。原因は消し忘れではなく、「誰が・何に・どこまで入れるか」を一覧で見られる場所が無いことにある。消せるのは、覚えている分だけだからだ。無料のツールやAIに、顧客情報や社内文書を入れてしまって大丈夫なのか便利だから、顧客名や社内文書をそのままAIに貼り付けている。だが入れた情報がどう扱われるかは、誰も確かめていない。答えは「使うな」ではなく、「どの情報を、どう設定して使えば安全か」という線引きを持つことにある。社員が個人のスマホやLINEで仕事のやりとりをしている個人の端末で業務連絡が回っているとき、本当のリスクは「漏れること」よりも、退職やトラブルのときに会社がその会話を把握・回収できないことにある。禁止では続かない。個人の道具を使う理由そのものを、仕組みで無くす。パスワードを使い回しているが、変えるきっかけがない同じパスワードを使い回してしまうのは、だらしなさではなく、数十のサービスを覚えきれない記憶の限界への合理的な適応である。だから「気合いで覚え直す・こまめに変える」方向はまた破綻する。答えは、覚えなくてよく、一つ漏れても連鎖しない仕組みに切り替えること。あやしいメールが増えたが、見分け方に自信がないあやしいメールを見分けられるようになることを目標にすると、いつか必ず来る「見分けられない一通」に無防備になる。問うべきは、どう見分けるかではなく、見分けられずに押した後も被害が広がらない作りになっているか——そこにある。クラウドに会社のデータを置くのが、なんとなく不安クラウドは危険で、自社に置けば安全——その不安は、比べる相手を間違えているのかもしれない。専任のいない中小企業では、自社のPCやサーバーのほうが更新も鍵かけも滞りやすい。問うべきは「クラウドか自社か」ではなく「どちらが自社の手に負えるか」。そして事故の多くは、預け先ではなく入り口で起きる。データのバックアップを取っているか、自信が持てないバックアップを取っているはずなのに、なぜか自信が持てない。その不安の正体は「取れているか」ではなく「いざというとき戻せるか」にある。多くの会社のバックアップは、一度も戻す実験をしていないために、取っているつもりのまま復元できない状態で眠っている。
