引き口
入れたけど使えていない/使われていない
全8件
せっかく導入したのに、ほとんど使われていない導入した仕組みが使われないのは、現場のやる気が無いからではない。原因は、その仕組みが現場の実際の仕事の流れに乗っていないこと。入れることが目的になり、現場で回るところまでが誰の仕事でもなくなっていた、という構造にある。一部の人だけが使いこなして、社内で差が開いている導入した仕組みが、使いこなす人と全く使わない人に割れる。ベンダーの示す定着率では見えないこの"割れ"を放っておくと、使える一部の人に業務が集中し、やがて新たな属人化を生む。便利になったはずが、前の紙の作業も"念のため"二重で続けている新しい仕組みを入れたのに、前の紙やExcelも"念のため"並行で続けてしまう。正体は現場の怠慢でも道具の欠陥でもなく、片方をやめていいという確証がまだ手に入っていないこと。だから「思い切ってやめろ」では動かない。機能が多すぎて、使っているのはごく一部だけ多機能な道具を、ごく一部の機能しか使っていない——多くの場合、それ自体は問題ではない。道具は自社の一つ二つの業務が回れば、もう元は取れている。厄介なのは「使いこなせていない」という罪悪感のほうで、要らない機能まで使おうとして、かえって現場を混乱させる。導入したシステムを、結局ほとんど使っていない使われずに眠っているシステムの多くは、自社の困りごとからではなく、補助金が出た・同業が入れた・営業に勧められた・念のため、という外側の理由から買われている。問題は現場でも道具でもなく、その買い物の出発点にある。現場が使ってくれず、前のやり方に戻ってしまった一度は使い始めたのに、いつの間にか前のやり方に戻っている。それは現場のやる気の問題でも裏切りでもない。新しいやり方が、古いやり方に「毎日の一手間」で負けているという、天秤の傾きの問題である。複数のツールを入れたら、データがバラバラになった会計は会計ソフト、顧客は顧客管理、在庫は在庫ソフト。一つずつは「その業務にいちばん合うもの」を選んだ。それなのにデータが食い違うのは、どれかのツールが悪いからではない。本当の欠落は、ツールとツールの「間」——データの受け渡しを、誰も自分の持ち場だと思っていないことのほうにある。AIを試してみたが、何に使えばいいか続かなかった話題のAIを一度は触ってみた。だが結局、何に使えばいいのか分からず、いつの間にか開かなくなった。原因はAIの性能でも、理解が足りないことでもない。用途を「AIの側に探させていた」——その入り口の向きにこそ、続かなかった本当の理由がある。
