中小企業IT利活用 困りごと辞典OSAKA AI-Center(OAIC)が運営する民間の取り組み

月末になると、集計作業で残業が決まってしまう

月末に決まって残業が出るのは、その月の仕事量のせいではない。日々の数字を「後でまとめて数える」前提で貯めるから、締め日という一点に山ができる。原因は月末ではなく、平常月の数字の入れ方のほうにある。

月の前半は、いつも通りに回っている。ところが締め日が近づくと、決まって遅くまで灯りがついている部署がある。売上、勤怠、在庫、経費——ひと月分の記録を数字にまとめる作業が、月末の数日に固まる。会社によっては「今月も来たか」と、あらかじめ予定として残業を織り込んでいる。この辞典が扱うのは、その「決まって」の部分である。

こんな場面に、心当たりはないか

  • 月末の二、三日だけ、なぜか毎月遅くまで残る。ほかの日はそこまででもない。
  • 締め日が近づくと「集計するからいったんデータを止めて」と声がかかり、現場がざわつく。
  • ひと月分の記録を、月末になってからまとめて数え直している。日々は、とりあえず溜めておくだけ。
  • 集計している間は、ほかの仕事が止まる。締めが終わるまで前に進めない。
  • 毎月やっている同じ作業なのに、何年やっても短くならない。慣れても、かかる時間はだいたい同じ。
  • 「今月は件数が多かったから」と理由をつける。だが、件数の少なかった月でも、やっぱり月末は遅い。

毎月のことなので、いつからか「そういうもの」として受け入れている。だが、月末に残業が固まること自体が、実はひとつの現象として説明できる。

オフィスの夜。ほとんどの席が消灯している中、一角だけ灯りがつき、ひと月分の書類を前に電卓とパソコンで数字をまとめている様子

たいてい、こう考える

月末の残業に向き合うとき、どの会社もおおむね同じ手を打つ。

「作業が多いから遅くなる。だったら、その作業を速くしよう」。集計の手順にショートカットを覚える、表計算の関数を組む、フォーマットを整えて数えやすくする。あるいは「人手が足りないから遅くなる」と見て、月末だけ他部署から応援を回す。そこに無理はない。作業は多少速くなるし、一人あたりの負担も少しは軽くなる。

だが、これらをやっても、月末の山は少し低くなるだけで、山であること自体は消えない。翌月になれば、また同じ高さの山がやってくる。速くする・人を足すという発想は、山を前提にして、その山をどう登るかを工夫している。山そのものを、なくそうとはしていない。

だが、本当の問題は「月末の仕事量」ではない

月末に残業が出る原因を、多くの人は「その月の仕事量」に求める。忙しかったから遅くなった、と。だが、この説明には合わないことがひとつある。同じ会社で、忙しい月も暇な月も、月末はやっぱり遅い。量が主な原因なら、件数の少なかった月は、月末もそれなりに早く終わるはずだ。そうならないのなら、原因は量ではなく、別のところにある。

鍵は「貯め方」にある。日々発生する数字が、その日のうちに集計に乗る形で残っているか。それとも「あとでまとめて数える」ことを前提に、ただ溜められているか。多くの会社は、後者だ。数字は毎日発生するのに、集計という作業は、締め日まで手つかずのまま先送りされる。

なぜ先送りになるのか。日々は目の前の仕事に追われている。そして集計には、締め日という以外に、それをやる締切がない。締切がないうちは、整える作業に手は伸びない。「集計はまだ先でいい」と、いくらでも後回しにできてしまう。これは怠慢ではなく、目の前の締切にしか反応できないという、人の自然なクセに近い。締め日という締切が来て、はじめて動く。

その結果、何が起きるか。ひと月かけて少しずつ溜まった「後回し」が、締め日という一点に、一斉に落ちてくる。ここで山ができる。月末の残業は、月末に発生した仕事が生んでいるのではない。ひと月かけて貯めた分が、締め日という一点にまとめて現れているだけだ。犯人は月末ではなく、平常月の数字の入れ方のほうにある。

言い換えれば、これは量の問題ではなく、置き方の問題だ。同じ総量の仕事でも、一点に集めれば山になり、日々にならせば平らになる。ここが、この困りごとの正体である。

では、どう考えるか

考え方を変える。月末の作業を速くしようとするのを、いったんやめる。代わりに目指すのは、締め日が来たときに、もう何も貯まっていない状態をつくることだ。

集計を「締めの日にやる作業」の位置から外す。そして「日々、ひとりでに積み上がっているもの」に変える。数字が発生した端から集計に乗っていけば、月末にまとめて数え直すものは、そもそも生まれない。締めの日にやることが「たまった分をゼロから数える」ではなく「出ている数字を確認して確定する」に近づけば、山は立ち上がらなくなる。

ただし、これを人の規律でやろうとすると続かない。「これからは毎日、その日のうちに集計しましょう」という掛け声は、まず続かない。理由は先に見たとおりで、日々には集計をやる締切がないからだ。専任の担当がいて、それが決まった日課になっているならともかく、そうでなければ、二週間もすれば元に戻る。

だから、人が思い出して手を動かさなくても、数字が入った端から集計に乗っていく——そういう仕組みの側で解く。人の規律をあてにするのではなく、放っておいても集計が進んでいる状態を用意する。この方向でなければ、月末の山は消えない。

選び方:道はいくつかある

月末の集計残業への向き合い方には、いくつかの道がある。どれが現実的かは、会社によって入れ替わる。

A案:日々の記録をAIに読ませ、「今の集計」を常に出しておく

いちばん根本に効くのは、集計という作業を、月末から日々へ移してしまうことだ。それも人手でやるのではなく、AIに肩代わりさせる。答えをもらう使い方ではなく、作業を肩代わりさせる使い方になる。やってもらうのは、日々たまっていく記録を、そのつど読んで整え、合算し、いつでも「今の時点の締め」を出しておくことだ。

使い方としては、たとえばこうなる。日々の売上・勤怠・経費といった記録(入力しているシート、日報、レジやシステムから出てくるデータ)を、AIが読める形で渡しておく。すると——

  • 「今日の時点で、今月の売上はここまで」「この経費項目は、もう先月分を超えた」というように、締め日を待たなくても、今の数字がいつでも見える状態になる。
  • 数字を整えて合算し、レポートの形にまとめる——ひと月分をまとめてやると最も時間のかかるこの部分を、AIがやる。人は、出てきた結果を確かめるだけになる。
  • 月末にやることは「最終的に確認して確定する」だけになる。ひと月分をゼロから数え直す、あの作業そのものが消える。

つまり、「月末にまとめてやる」という人の段取りそのものをやめ、常に集計され続けている状態に置き換える、という考え方だ。山を速く登る工夫ではなく、山ができない仕組みに変える。ただし、最終的に数字を確定し、その責任を持つのは人である。AIは、いつでも最新の集計を用意しておく役に徹する。

  • 向く場面:毎月ほぼ同じ項目を、同じ形で集計している会社。締めの数日に負担が集中して、ほかの仕事が止まってしまう会社。
  • 割に合わないこと:合わない場面もある。日々の記録をAIに渡せる形にする段取りを、最初に一度つくる手間はかかる。また、記録のつけ方が月ごとにバラバラだと、AIも正しく合算できない。出てきた数字が合っているかの最終確認は、人がやる必要がある。
  • 始める前に要ること:今その集計を「どのデータから・どういう手順で」作っているかを、一度書き出しておくこと。人が頭の中でやっている手順が見えていないと、そのまま任せることはできない。

※AIにはいろいろな種類・サービスがある。ここでは「特定の製品を入れる」話ではなく、「日々の集計をAIに肩代わりさせる」という考え方を指している。どれが合うかは、会社の状況によって変わる。

B案:締めを、月一回でなく小分けにする

集計は人手のまま、締めるタイミングを週ごと・日ごとに割る。ひと月分の大きな山を、小さな山に何度か分けることで、一回あたりの高さを下げる。

  • 向く場面:AIに渡す形をすぐには用意できないが、月末の一点集中だけは崩したい会社。
  • 割に合わないこと:山の数が増えるぶん、締める回数そのものは増える。しかも「毎週やる」を続けられるかは、結局は人の規律に頼る面が残る。
  • 始める前に要ること:何を、どの単位(週・日)で締めるかを決めること。全部を小分けにするのではなく、月末に固まりやすいものから始める。

C案:月末だけ、人を増やして担ぐ

応援や外注で、締めの数日だけ人手を足す。山そのものは残すが、担ぐ人数を増やして一人あたりを軽くする。

  • 向く場面:とりあえず今の月末の負担を、すぐ和らげたい会社。仕組みを変える余力が、今はない会社。
  • 割に合わないこと:根本の「貯め方」は変わらないので、山は毎月そのまま来る。毎月人を集め続ける必要があり、応援する側の仕事も止まる。
  • 始める前に要ること:応援する人でもできるよう、集計の手順を書き出しておくこと。属人的なままだと、人を足しても回らない。

どこから入るかは、いま割ける手で決まる。B案・C案は「山を前提に、登り方を軽くする」道であり、A案は「山そのものをなくす」道である。この違いが、どこから手をつけるかの分かれ目になる。

自分でできる、はじめの一歩

一円もかけずに確かめられることがある。

まず、原因が「量」なのか「貯め方」なのかを、自分で確かめてみる。直近で、件数の少なかった月を思い出す。そして、その月の月末も遅かったかを振り返る。もし、暇だった月でも月末はやっぱり遅かったのなら、原因は量ではなく貯め方だと、はっきりする。ここが分かるだけで、打つ手の方向が変わる。

次に、小さく試してみる。月末にまとめてやっている集計のうち、いちばん重い項目をひとつだけ選ぶ。そして一週間だけ、その数字を「今いくつか」が毎日見える状態にしてみる。手作業でかまわない。一週間やってみて、月末にその項目を数え直す必要が消えるなら、効果は体で分かる。そこまで確かめたうえで、日々続く仕組み(A案)に載せるかを決める段になる。全部を一度に仕組みにする必要はない。

この一歩でできるのは「原因を見きわめる」「一項目で効き目を試す」までだ。そこから先、ひと月分すべてを常時集計に載せるとなると、日々の記録をどう渡すか、という段取りの設計が残る。

それでも、自社の事情が残るときは

「うちの集計は項目が多くて、どこから日々に移せばいいのか分からない」「日々はとりあえず溜めておく形になっていて、それをAIに渡せる形にできる気がしない」「そもそも、今の集計手順を自分たちでも説明できない」——そういう声は、実際によく出る。毎月なんとか回してきた作業ほど、手順が人の頭の中にしかなく、外から見えにくいものだ。

そういうときは、OSAKA AI-Center の窓口に相談するという選択肢がある。何かを買う必要はなく、こちらから売り込むこともない。「うちは月末にこういう集計をしていて、どれから手をつけたものか」——その整理を一緒に考えるところまでが、この辞典の役割である。

ITは、本来は専門家の領分でもある。弁護士や税理士のように、ITと経営の両方を知る第三者を"ブレイン"として側に置く——という考え方もある。何もかも自社だけで抱え込まなくていい。この辞典も、そうした相手と一緒に読めば、自社に合った次の一手につながりやすい。

うちの場合はどうなのか、という部分は残る。

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この辞典について

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