中小企業のIT・AI 困りごと辞典OSAKA AI-Center(OAIC) 運営:インフォフラッグ株式会社

「保守も一緒に」と言われるが、本当に必須なのか分からない

公開日 更新日

要点

保守は契約した日に働くのではなく、届いた案内や通知を受け取って動く人がいる所で働く。必須かどうかは物によって、働くかどうかは受け取る側によって変わる。

  • A案 届いた案内をAIに「予定表に入る作業」へ直させる
  • B案 物ごとに付ける物と付けない物に分ける
  • C案 保守は続け、受け取る役の置き場所を決める

保守料が価値に変わるのは、届いたものを受け取って動く体制が、買った側にあるときである。保守から届くのは更新の案内、通知、問い合わせの窓口までで、それを読み、日を決め、当てて確かめる役は見積書にも契約書にも出てこない。必須か不要かの二択では、この部分が抜け落ちる。

目次

書類を電子化するために、スキャナーを一台買うことにした。届いた見積もりには、本体のほかに保守料と設置費が並んでいる。「保守も一緒にどうぞ」と言われ、「入っていないと、何かあったときに困りますよ」とも言われる。外してよいものなのかどうか、手元に判断の材料は無い。事務所には、何年も前に入れた販売管理のソフトや通信の機器もあり、そちらは毎年、保守料の請求書が届くたびに払ってきた。保守は、本当に必須なのか——この辞典が扱うのは、その場面である。

保守を付けるか付けないかを選ぶ場面があるのは、買い切りのソフト、機器、作ってもらった仕組みである。月額で使うクラウド型のサービスは、基盤の保守が事業者の側の仕事として料金に含まれている形のものが多く、付けるかどうかを選ぶ場面になりにくいので、ここでは扱わない。

こんな場面に、心当たりはないか

  • 見積もりに保守料が入っている。外せるものなのか、外すと何が変わるのかを、聞かないまま契約している。
  • 毎年、保守の更新の請求書が届く。この一年でその保守を何に使ったのかを、社内の誰も挙げられない。
  • 保守の窓口の電話番号は契約書のどこかに書いてあるはずだが、かけたことが一度も無い。
  • 「更新版のご案内」「重要なお知らせ」という件名のメールが、開かれないまま溜まっている。あるいは、どのアドレスに届いているのかが分からない。
  • 業者からは「監視しています」と聞いている。通知が来たときに誰が何をするのかは、決まっていない。
  • 数万円の機器にも、止まると仕事が止まる機器にも、同じように保守が付いている。

どれも、保守が要るか要らないかの手前で、払った保守がいま働いているのかどうかが分からない場面である。

事務所の棚に置かれた通信機器の横に、封を切っていない「保守更新のご案内」の封筒が数通立てかけてあり、手前の机のパソコンの画面には、未読のままの案内メールの件名が並んでいる様子

たいてい、こう考える

この場面での考え方は、二つに分かれやすい。

一つは「何かあったときに困るから、付けておく」。保守を保険のようなものとして受け止め、金額が払える範囲なら付ける、と考える。

もう一つは「何年も何も起きていない。払うだけ無駄ではないか」。使った覚えが無いのだから外してよいのではないか、と考える。

付ける側と外す側で、結論は反対を向いている。ただ、前提は同じである。どちらも、保守を、契約すればそれだけで働くものとして扱っている。違っているのは、働く出番が来ると見るか、来ないと見るかだけである。

だが、本当の問題は「保守が要るか、要らないか」ではない

保守契約の中身を並べると、おおよそ次のようになる。不具合が起きたときの調査と修正。OSなどの更新に合わせた対応。安全上の弱点が見つかったときの修正。問い合わせへの回答。止まったときの復旧の支援。更新版の提供。機器や仕組みの監視。範囲は契約ごとに違うが、どれも要るものである。メーカーが公開している保守の条項にも、電話やメールで技術情報を提供して不具合の解決を支援すること、修正の情報と新しい版のソフトを提供することを、中身として書いている例がある。

ただし、この一覧は提供する側がやることの一覧である。一つひとつに、受け取る側の仕事が対になっている。

  • 問い合わせの窓口は、何を聞くかが分かっている人がかけて、はじめて答えが返ってくる。
  • 更新版が提供されても、それをいつ当てるか、当てたあとに仕事がそれまで通り動いているかの確認は、使う側の判断になる。
  • 監視は、通知が届くところまでである。通知を受けて何をするかは、受け取った側が決める。

保守の説明は、提供する側がやることの一覧として書かれることが多い。受け取る側がやることは、その一覧には載りにくい。買う側の手元には「やってもらえること」のほうが残りやすい。

国の機関の情報システムについての決まり(デジタル庁の標準ガイドライン)は、発注した側が保守の事業者に毎月の作業の実績の報告を求め、それを確認する、という作りで書かれている。中小企業に当てはまる決まりではない。ただ、保守というものが、受け取って確かめる役が発注した側にいる前提で組まれている点は、同じ向きである。

受け取る側の仕事には、共通した性質がある。届いた案内を読んでも、いつ・誰が・どのくらいの時間で・どうなったら完了かが見えない。この四つが見えない仕事は、予定表に書き込めない。書き込めない仕事は後回しになり、後回しになった仕事は「手が空いたとき」のものになる。その「手が空いたとき」は、なかなか来ない。

IT部門を持たない会社では、機器やソフトを買う窓口になった人が、その延長でITの担当も兼ねていることがある。導入して動き出せば、仕事に支障が出ないかぎり、日常的に触ることはない。保守を付けると決めたのは経営者で、その時点ではもっともな判断である。ただ、そこで決まったのは払うことまでである。届いたものを誰が受け取って動くのかは、見積書に項目として出てこないので、決める場面そのものが無い。

つまり、保守は契約した日に働き始めるのではなく、届いたものを受け取って動く人がいる所で働く。その人がいない所では、保守は払われているのに働かない。これは買う側だけの話ではない。売る側にとっても、用意した更新版や窓口が使われないままになっている。働いていない保守では、売る側と買う側の両方が損をしている。

では不要なのかというと、そうはならない。保守を通じて届く物があるからである。公正取引委員会が公表している相談事例集(平成30年度=2018年度)には、ソフトウェアの保守契約についての相談が載っている。そこでの保守契約の中身は、機能を改善したアップグレード版が定期的に提供されるサービス、と説明されている。こうした物では、保守を外すと、更新版がそれまでの形では届かなくなる。また、社外から社内につなぐための機器のように、会社の出入口にあたる物は、更新を受け取り続ける必要がある種類の物である。壊れたら買い替えれば済む機器とは、保守の意味が違う。

IPA(情報処理推進機構)が公開している契約書のひな形も、取引の全体を示した図の中で、パッケージソフトなどの保守契約を「必要に応じて」結ぶものとして描いている。

入口の問いへの答えは、二つに分かれる。必須かどうかは物によって変わり、働くかどうかは受け取る側によって変わる。

では、どう考えるか

問いを「必須か、不要か」から、「この保守から届いたものを、誰が受け取って動くのか」に置き換える。

そのうえで、保守の付いている物、付けようとしている物を、一つずつ二つの面から見る。

一つは、物の側の事情である。壊れたとき、買い替えで済む値段と手間か。止まると仕事が止まる物か。直しや更新が、保守を通じて届く物か。社外との出入口になっている物か。外したあとで入り直せるか、その条件は何か。これらは、契約書やメーカーが公開している条項で確かめられる。

もう一つは、自社の側の事情である。保守から届く案内、通知、問い合わせの窓口を、受け取って動く人が社内にいるか。こちらは、契約書のどこにも書かれていない。

二つを重ねると、扱いが分かれてくる。値段が小さく、同じ物がすぐに買え、止まっても仕事が続けられる機器なら、「保守は付けない。壊れたら買い替える」は成り立つ判断である。冒頭のスキャナーが数万円の物で、使い道が絞られているなら、これに当たる。一方、更新が保守を通じて届くソフトや、社外との出入口になっている機器は、同じ扱いにはならない。そのとき問いは、付けるかどうかから、払うと決めた保守を、どうやって働かせるかに移る。

なお、保守契約でやることと、納められた物が契約どおりでなかった場合の手当ては、別のものである。先の国の決まりも、保守契約に基づく作業と、契約不適合責任に基づく作業とを、明確に区別して管理すると書いている。後者については、法律と個々の契約に定めがある。保守の見積もりを見るときは、この二つが別の話であることを知っているだけで、何に対して払うのかが読みやすくなる。

選び方:道はいくつかある

払った保守を働かせる道と、保守を付ける物を選び直す道がある。

A案:AIに、保守から届いた案内を「予定表に入る作業」に直させる

受け取る側の仕事が進まないのは、届く文面が専門の言葉で書かれていて、何を、いつまでに、どのくらいの手間でやればよいのかが読み取りにくいからである。この読み解きと書き直しを、AIに持たせる道がある。保守の仕事をAIに代わらせるのではない。受け取る側の仕事のうち、読んで作業の形にするところを持たせる。

やることは次のとおり。届いた更新の案内や通知の文面を、そのままAIに渡して頼む。

  • 「この案内は、こちらに何をするよう求めているか。しなかった場合に何が起きると書いてあるか。期限は書いてあるか。専門の言葉を使わずに説明して」
  • 「それを、いつ・誰が・どのくらいの時間で・どうなったら完了か、の形の作業に書き直して。文面から分からない項目は、分からないと書いて」
  • 「画面にこういう表示が出ている。昨日の午後からで、月次の締めの処理をしたあとに出るようになった。保守の窓口に出す問い合わせの文に整えて。先方に聞き返されそうな点で、まだ書けていないものも挙げて」
  • 「この保守契約書の文面を、提供する側がやることと、こちらがやる前提になっていることに分けて」

返ってくるのは、たとえばこういう形になる。

  • 「この案内は、ソフトを新しい版に入れ替えるよう求めています。入れ替えない場合、今回見つかった弱点が残ると書かれています。期限の記載はありません」
  • 「作業の形にすると、管理者のIDで管理画面に入り、更新を実行する、となります。かかる時間と、作業中に利用を止める必要があるかどうかは、文面に記載がなく分かりません。完了の目安は、画面に出る版の番号が案内の番号と同じになっていることです」
  • 「契約書では、更新版の提供は先方の作業です。提供された更新版を入れる作業をどちらが行うかは、記載が見当たりません」

「分からない」と返ってきた項目は、そのまま保守の窓口への質問になる。かかる時間はどのくらいか。作業中は使えなくなるのか。入れる作業はどちらがやるのか。問い合わせの窓口は、聞くことが分かってはじめて使える。四つの項目が埋まれば、その作業は予定表に書き込める。一度もかけたことの無い窓口に、最初にかける用件ができるということでもある。

  • 向く場面:保守は続けているが、届いた案内が読まれないままになっている会社。担当が兼任で、文面を読み解く時間を取りにくい会社。
  • 割に合わないこと:AIが扱えるのは、人が渡した文面までである。案内が、導入したときの担当者や、すでに退職した人のアドレスに届いている場合、渡す文面が手元に無く、この道は始まらない。届くたびに文面を渡す一手も、人に残る。作業の形になったあと、更新を当て、再起動し、動きを確かめる手を動かすのも人である。当てたことで他の仕組みが動かなくなるかどうかは、AIの整理からは決まらない。部品の交換や修正版の提供、機器の修理は保守の側の仕事で、AIが代わるものではない。また、契約書や通知の文面を外のAIサービスに渡すことになる。入力した内容が機械学習に使われる設定になっていないかを、使うサービスの規約で先に見ておく必要がある。
  • 始める前に要ること:保守の案内や通知がどのアドレスに届いているかを確かめ、いま社内にいる人が読める宛先になっていること。保守契約書と、直近に届いた案内が一通、手元にあること。

※どのAIを使うかは問わない。ここで指しているのは、届いた文面を読み解いて作業の形に書き直すところをAIに持たせる、という使い方である。

B案:保守を、物ごとに「付ける物」と「付けない物」に分ける

全部に付けるか、全部外すかではなく、物ごとに決める道。先に挙げた物の側の事情——買い替えで済むか、止まると仕事が止まるか、更新が保守を通じて届くか、社外との出入口か、入り直せるか——を、保守料を払っている物の一つずつに当てていく。

この道の利点は、判断の材料の多くが、外す前に確かめられることにある。外したあとで入り直すときの条件は、メーカーごとに決まっていて、公開している例がある。さかのぼって保守料を払う条件を定めている例、入り直せる期限を保守の終了から一定の期間内に区切っている例がある。外してから知るのではなく、外す前に読んでおける。

もう一つ、物そのものの期限がある。OSなどを作った会社は、製品ごとにサポートの期限を公表している。保守契約を結んでいても、土台になっているOSのサポートが終われば保守の提供も終える、と条項に書いている例がある。保守料を払い続けていれば期限なく面倒を見てもらえる、という関係ではない。期限が近い物では、保守を続けるかどうかより、その物をいつまで使うかのほうが先の話になる。

  • 向く場面:保守の付いた物がいくつもあり、どれも同じ扱いで更新してきた会社。新しく買う物の見積もりに保守が入っていて、付けるかどうかを決める場面にある会社。
  • 割に合わないこと:条件を確かめるには、契約書と公開されている条項を、物ごとに読むことになる。付けないと決めた物が壊れたときは、買い替えの費用と、代わりが届くまでの間の仕事を、自社で持つ。「止まっても困らない」という見立てが、止まってみて外れることもある。入り直す条件が、外す前より重くなる物もある。
  • 始める前に要ること:保守料を払っている物の一覧。何に、年にいくら、更新の月はいつか。請求書を一年ぶん並べれば作れる。

C案:保守は続け、受け取る役の置き場所を決める

保守を外しにくい物について、届いたものを受け取る役を、どこに置くかを決める道。置き場所は二つある。

一つは社内。案内や通知が届く宛先を、個人のアドレスから、いまいる複数の人が見られる宛先に替える。そのうえで、届いたときに開く人を一人決める。日を決めて見回る話ではなく、届いたものが、いまいる人の前に出てくる状態を作る話である。

もう一つは契約の中。更新版を入れる作業や、入れたあとの確認と報告までを含められないか、いまの保守の業者に聞く。IPAのひな形の全体図では、運用の支援は、保守とは別の契約として並んでいる。保守を付ければ付いてくる作業としては描かれていないが、頼む形そのものは用意されている。

  • 向く場面:保守を外せない物があり、その案内が特定の一人に、あるいはもういない人に届いている会社。
  • 割に合わないこと:社内に置く場合、開いた人が文面を読んでも何をすればよいか分からなければ、そこで止まる。兼任の仕事が一つ増えることにもなる。契約に含めてもらう場合は、費用が上がる。業者によっては受けていないこともある。任せたあとも、「入れました」という報告を受け取る役は社内に残る。
  • 始める前に要ること:いま、案内と通知がどこに届いているかを知ること。分からなければ、保守の業者に、登録されている連絡先を聞く。

Bは、どの物に保守を付けるかを決める道。AとCは、付けた保守を働かせる道。向きが違うので、どちらから入っても成り立つ。

自分でできる、はじめの一歩

保守料を払っている物を、一つだけ選ぶ。確かめることは二つある。

一つ目。その保守の案内や通知は、どのメールアドレスに届いているか。契約書か請求書に書かれた連絡先を見る。書かれていなければ、次に業者と話すときに聞く。出てきた宛先が、いま社内にいる人のものかどうかを見る。

二つ目。直近に届いた案内を一通開き、その横に四つ書いてみる。いつ・誰が・どのくらいの時間で・どうなったら完了か。四つとも書けたなら、その保守は受け取れる状態にある。書けない項目が残ったなら、それが、その保守を受け取るのに足りていないものである。

ここまでで分かるのは、その一つの保守が受け取られているかどうかまでだ。続けるのか、外すのか、受け取る役をどこに置くのかという判断は、その先に残る。

それでも、自社の事情が残るときは

「どの機器が社外との出入口にあたるのか、見分けがつかない」「外すと更新が届かなくなる物なのかどうか、契約書を読んでも分からない」「受け取る役を置こうにも、兼任の一人にこれ以上は載せられない」——物ごとに分けようとしても、ここから先は会社ごとの事情で答えが変わる。保守料の金額は請求書に書いてあるが、その保守が働いているかどうかは、どの書類にも書かれていない。

そういうときは、OSAKA AI-Center の窓口に相談するという選択肢がある。何かを買う必要はなく、こちらから売り込むこともない。「うちが払っている保守のうち、働いているのはどれか」——その仕分けを一緒に考えるところまでが、この辞典の役割である。

うちの場合はどうなのか、という部分は残る。

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出典

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