中小企業のIT・AI 困りごと辞典OSAKA AI-Center(OAIC) 運営:インフォフラッグ株式会社

共有フォルダが散らかって、どれが最新のファイルか分からない

公開日

要点

散らかりの元は、どれを使うかという決めごとがファイルの外の、人の記憶にしか置かれていないこと。作った人が辞めると、ファイルは残って意味だけが消える。

  • A案 版違いのファイルをAIに見比べさせ、違いを並べた表を作る
  • B案 「使う版」だけを置く場所を分け、置ける人を絞る
  • C案 過去の版に戻せる保存先に寄せ、写しを作る理由を減らす

共有フォルダに「最新」「最新2」「〇〇さん用」が並ぶのは、整理が下手だからではない。どれを使うことになっているかという決めごとが、ファイルの外の、作った人や近くにいた人の記憶にしか置かれていないからだ。その人が辞めると、ファイルは残って、どれを使うかという意味だけが消える。

目次

見積書のひな形を開こうとして、共有フォルダの前で手が止まる。「見積書_最新」「見積書_最新2」「見積書_最新_修正」「見積書_〇〇さん用」。どれも見覚えはあるけれど、いま皆が使っているのがどれなのかは、名前からは読み取れない。作ったのは去年辞めた人だったはずで、開いて見比べれば違いは分かっても、どちらが正しいのかを決められる人が社内にいない——この辞典が扱うのは、その場面である。

こんな場面に、心当たりはないか

  • 同じ書類のファイルが「最新」「最新2」「最終」「修正版」といった名前で何本も並んでいる。
  • 「〇〇さん用」「〇〇社向け」と付いたファイルが古い版なのか、その相手のために作り分けた版なのかを、誰も言い切れずにいる。
  • 更新日がいちばん新しいファイルを開いたら、単価が古いままだった。
  • 作った人が辞めたフォルダがあり、消してよいのか使い続けてよいのかを誰も言えないので、誰も触らずにいる。
  • 同じ価格表を、人によって違うファイルから開いていた。見積書が二通りになって、初めてそれに気づいた。
  • 迷ったときは、事情を知っている人に聞いて済ませている。その人が休むと、そこで仕事が止まる。

並んでいるのはファイルが多すぎるという話というより、どれを使うかを知っているのが、社内の限られた人だけという話である。

事務所のパソコン画面に共有フォルダが開き、「見積書_最新」「見積書_最新2」「見積書_最新_修正」「見積書_〇〇さん用」とよく似た名前のファイルが縦に並んでいる。画面の前で、社員が二つのファイルを左右に開いて見比べ、手を止めている様子

たいてい、こう考える

この場面で出てくる手はたいてい二つである。

一つは大掃除である。誰かが時間を取ってフォルダを開き、古そうなものを別の場所へ移し、残したものに分かりやすい名前を付け直す。もう一つは名前の決まりを作ることで、「ファイル名の頭に日付を入れる」「最新という言葉は使わない」と社内に伝える。

どちらも筋は通っている。片づけた直後は実際に探しやすくなるし、決まりが守られているあいだは、新しい散らかりも増えにくい。

ただ、大掃除はたいてい途中で止まる。止まる場所も決まっていて、作った人がもういないファイルの前である。中身を開けば何が書いてあるかは分かる。でも、それを今も使ってよいのかは中身に書いていないので、片づける人はそのファイルを残すしかない。決まりのほうも忙しい月に一度崩れると、少しずつもとの並びに戻っていく。

だが、本当の問題は「散らかっていること」ではない

ファイルには中身と名前と日付が付いている。ところが、そのどれにも「これを使うことになっている」とは書かれていない。

その決めごとはたいてい、ファイルの外で交わされている。「単価を直したから、今日からこっちを使って」と口で伝え、メールに一言添える。決めた人と聞いた人は覚えているので、そのあいだは仕事が回る。共有フォルダに残るのはファイルだけで、どれを使うかという決めごとは、関わった人の記憶の側に置かれたままになる。

名前の「最新」はその決めごとをファイルに書き込もうとした跡である。でも、この言葉は付けた日にしか正しくない。次に誰かが手を入れれば、「最新」はそのまま古い版の名前になる。日付も頼りにはならず、古い版を開いて一か所だけ直して保存すれば、日付の上ではそれがいちばん新しいファイルになる。

ファイルが増えていく理由も一つずつ見れば筋が通っている。人の作ったファイルを上書きすると、元に戻せないことがあるからだ。データが壊れる原因は記憶装置の故障や攻撃だけではなく、「運用時の操作ミスによる消去や誤った更新と多岐に渡る」と、IPA(情報処理推進機構)の「情報セキュリティ10大脅威2026」の解説書も書いている。だから手を入れる人は元を残したまま写しを作るし、「〇〇さん用」もほかの人の版を壊さないための作り分けであることが多い。ファイルの写しは戻す手段の無い保存先で社員が自分で用意した保険である。散らかりはその保険が一人分ずつ積み重なった形をしている。

それに、共有フォルダを置くことは経営者が決めても、中の並べ方やどれを使うかを決める役までは、誰にも割り当てられていないことが多い。決めごとはそのつど、近くにいる人どうしで済まされてきた。だから作った人が辞めると、ファイルはそのまま残り、どれを使うかという意味だけが一緒に出ていく。大掃除が作った人のいないファイルの前で止まるのは、そこで意味が途切れているからである。

同じ共有フォルダには隣り合う別の困りごとも置かれている。辞めた人の名前のフォルダが残るのと同じように、辞めた人が今もそのフォルダを開ける設定のまま残っていることがある(この辞典の「退職した人が、まだ会社のデータに入れるかもしれない」で扱っている)。長く誰も開いていないフォルダを消してよいかは、法令の保存期間も絡む別の物差しの話になる(「古い顧客名簿や退職者の書類が溜まり続けているが、消してよいのか決められない」)。

取引先とデータでやりとりした請求書や見積書は、さらに事情が違う。国税庁は電子帳簿保存法の一問一答で、同じ取引先から同じ仕組みで受け取っている請求書のデータを、理由も規則もなく保存先に散らばらせ、すぐに出せない状態にしている保存のしかたは認められない、としている。社内で作りかけの下書きにはかからない話だが、受け取った請求書のデータまで同じ散らかり方をしているなら、この問いが書いている状態に近づく(保存のしかたは「メールで届いた請求書や領収書を、どう保存すればいいのか分からない」で扱っている)。

では、どう考えるか

問いを「どう片づけるか」から、「どれが使う版なのかが、作った人に聞かなくても分かるか」へ移す。

そう問い直すと、手の付け方は三つに分かれる。すでに溜まった山については、版ごとの意味を、事情を知る人がいるうちに取り戻す。これから先については、使う版がどれかを、人の記憶ではなく置き場所で示す。そして、写しを作らなくても元に戻せる形にして、山が増える理由そのものを減らす。

三つとも全部のファイルに手を付ける話ではない。困っているのはたいてい、毎日のように開く一部の書類である。見積書や価格表のひな形、手順書、よく使う申込書。どれが正しいかで迷って仕事が止まるのは、その数本で起きている。

選び方:道はいくつかある

散らかり方は会社ごとに違っていて、事情を知る人がまだ社内にいるかどうかでも、手の付けやすい道が変わる。

A案:版違いのファイルをAIに見比べさせ、「どこが違うか」を並べた表を作らせる

どれが正しいかを決めるのは人である。ただ、決める前の作業が重い。同じ書類の版を二つ、三つと開き、どこが違うのかを一行ずつ目で追うことになる。作った人がいれば一言で済むことを、残った人は見比べから始めなければならない。この見比べを、AIに任せる道がある。

進め方は二段になる。

一段目で、束を作る。共有フォルダからファイルの名前・置き場所・最後に更新した日の一覧を取り出してAIに渡し、こう頼む。

  • 「名前と置き場所から、同じ書類の版違いらしいファイルを束にまとめて。束ごとに、名前と更新日を並べて」
  • 「『最新』『最終』『修正』『コピー』『〇〇さん用』のような言葉が付いているものに、印を付けて」
  • 「名前から束にできないものは無理に入れず、『分からない』にまとめて」

二段目で、束の中身を見比べる。よく使う書類の束から順に、版のファイルをAIに読ませて頼む。

  • 「この二つ(三つ)の違いを、場所ごとに並べて。どちらが新しいか、正しいかは決めずに、違いだけを書いて」
  • 「違いのうち、金額・日付・取引先名・条件の文に関わるものを先に並べて」

返ってくるのは、たとえば次のような行である。

  • 「見積書_最新 と 見積書_最新2:違いは三か所。単価の表の二行、支払い条件の一文、末尾の住所」
  • 「見積書_〇〇さん用:ほかの二つと単価は同じ。宛名の欄と、値引きの行が一つ多い」

ここまで来ると、人に聞く問いが短くなる。「どれを使っていますか」と聞く代わりに、「支払い条件は、この一文とこの一文のどちらが今のものか」と聞ける。作った人がいなくても、その書類を日々使っている人なら、違いの一行を見れば答えられることが多い。〇〇さん用のように、古い版ではなく作り分けた版だと分かれば、消す側ではなく残す側に回せる。山のままでは誰も答えられなかった問いが、一行ずつの、答えられる問いに分かれる。

  • 向く場面:作った人が辞めたり異動したりして、どれが正しいかを一言で言える人がいない書類がある会社。版違いが何本もあって、見比べに時間を割けない会社。
  • 割に合わないこと:AIが出すのは違いの一覧であって、どれが正しいかの答えではない。名前からの束ね方も見当なので、違う書類を一つの束に入れたり、同じ書類を見落としたりすることがある。「新しいフォルダ(2)」のように名前から中身の分からないものは、一段目で「分からない」に残る。違いの一覧にも読み落としがありうるので、決める前に、人が元のファイルで該当の箇所を確かめる前提になる。さらに、版違いのファイルには取引先の名前や金額、ときには個人の情報が入っている。中身を読ませる二段目では、使うAIサービスが入力をどう扱うかを先に確かめ、要らない部分を伏せてから渡す手当てが要る。一度に読み込める量や形式も、サービスや契約によって違う。そして答えが出たあとも、ファイルはそのまま増え続ける。決まった答えをどこに置くかは、B案やC案の話として残る。
  • 始める前に要ること:保存先からファイルの一覧を取り出すこと(取り出し方は保存先によって違う)。それから、最初に見比べる束を、毎日のように開く書類から一つ選んでおくこと。

※AIにはいろいろな種類・サービスがある。ここでは「特定の製品を入れる」話ではなく、「版違いのファイルの見比べをAIに任せ、人が答えやすい問いに変える」という考え方を指している。どれが合うかは、会社の状況によって変わる。

B案:「使う版」だけを置く場所を分け、そこに置ける人を絞る

使う版がどれかを、名前ではなく置き場所で示す道である。書類ごとに、いま使う版を一つだけ置く場所を作る。手を入れるときは別の作業用の場所で直し、決まったら使う版を入れ替える。外した版は消さずに、「前の版」の場所へ移す。

要になるのは、使う版の場所に置ける人を、決める役の一人か二人に絞ることである。ほかの人は開いて使えるけれど、置き換えはできない設定にする。そうしておけば、名前の付け方を誰かが守り続けなくても、その場所には一つしか並ばない。決まりを人の注意で守るのではなく、保存先の設定が守る形になる。

  • 向く場面:見積書や価格表のひな形、手順書のように、皆が同じものを使う前提の書類がはっきりしている会社。決める役を引き受けられる人がいる会社。
  • 割に合わないこと:決める役の人のところで、置き換えが滞ることがある。その人が一人きりで辞めれば、同じ問題が場所を変えて起きるので、決める役は二人に分けておくことになる。また、最初にどれを使う版として置くかは、誰かが決めなければ始まらない。作った人がいない書類では、そこでA案の見比べが要る。すでに溜まっている山もこの道では減らない。
  • 始める前に要ること:皆が同じものを使う前提の書類を、数本だけ挙げること。全部の書類を対象にすると、決める役の手が回らなくなる。

C案:過去の版に戻せる保存先に寄せ、写しを作る理由を減らす

写しが増えるのは、上書きすると戻せないからだった。その理由のほうを減らす道である。保存先によっては、一つのファイルの中に過去の版が残り、前の状態に戻せるものがある。戻せる形になっていれば、手を入れる人は元を残すための写しを作らずに、同じファイルを直せる。ファイルは一つのまま、版はその中に積み重なっていく。

  • 向く場面:同じ書類に何人もが手を入れる会社。写しが増える一番の理由が、人の版を壊したくない、元に戻せなくなるのが怖い、という会社。
  • 割に合わないこと:過去の版がどれだけの期間残るかは、保存先と契約によって違うので、使う前に自社の保存先で確かめることになる。保存先を移すなら移す手間と費用がかかり、溜まった写しも一緒に移るだけで、山そのものは減らない。移った先でも、写しを作る癖は残りうる。移すときには、誰が開けるかの設定も作り直しになる。IPAの中小企業向けガイドラインは共有の設定を見直すことを、企業の規模に関わらず実行すべき対策の一つに挙げている。もう一つ、版の履歴があることと、別の場所にバックアップがあることは別の話で、IPAの資料は元のシステムと分けた場所にバックアップを置く方法を挙げている(バックアップは、この辞典の「データのバックアップを取っているか、自信が持てない」で扱っている)。
  • 始める前に要ること:いま使っている保存先に、過去の版に戻す働きがあるかどうか、あるならどの範囲で使えるかを確かめること。移さなくても、すでに備わっていることがある。

A案はすでにある山の意味を取り戻し、B案は使う版の居場所を作り、C案はこれから山が増える理由を減らす。どれから手を付けるかは、事情を知る人がまだ社内にいるかどうかで変わる。辞める予定の人がいるなら、A案の問いを聞ける相手がいるのは、その人がいるあいだに限られる。

自分でできる、はじめの一歩

フォルダを片づける前に、書類一つで確かめられることがある。

  1. 毎日のように開く書類を一つ選ぶ。見積書のひな形、価格表、よく使う申込書など。
  2. その書類の版違いのファイルを、名前と更新日で書き出す。「最新」「最新2」「〇〇さん用」まで、並んでいるものを全部。
  3. その書類を使っている人に、どのファイルを開いているかを一人ずつ聞く。誰かの答えに合わせてしまわないように、皆の前ではなく一人ずつ聞く。
  4. それぞれのファイルを作った人が、いま社内にいるかどうかを横に書く。

答えが一つにそろえば、その書類の使う版はもう決まっていて、足りないのはそれがどこにも書かれていないことだけである。答えが割れれば、同じ書類が社内で二通りに使われていることが、今日分かったことになる。作った人がいないファイルに印が付いたら、そこが意味の途切れかけている所である。

この一歩でできるのは、一つの書類について、使う版が決まっているのか割れているのかを知るところまでだ。ほかの書類をどうするか、使う版をどこに置くかは、その先に残る。

それでも、自社の事情が残るときは

「作った人がいない版が何本もあり、使っている人に聞いても答えが割れる」「〇〇さん用のファイルが、作り分けた版なのか古い版なのか、見比べても判断がつかない」「受け取った請求書と社内の下書きが同じフォルダに混ざっていて、どこから分けたものか分からない」——どの版を使うかはその会社の仕事の中身で決まるので、外から当てはめる決まりでは答えが出ない。

そういうときは、OSAKA AI-Center の窓口に相談するという選択肢がある。何かを買う必要はなく、こちらから売り込むこともない。「うちの共有フォルダはこういう並び方で、どれが使う版なのかをどう確かめたものか」——その見分け方を一緒に考えるところまでが、この辞典の役割である。

うちの場合はどうなのか、という部分は残る。

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出典

この辞典について

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